フィレンツェの街とコインケース

 

どうして

 

こんなにも強く心惹かれるのだろう。

 

 

フィレンツェを初めて訪れたのは、

8年前の新婚旅行でのこと。

 

行き先は

フィレンツェとフランスのモンサンミッシェル。

 

フィレンツェを選んだのは

革と職人の街、という漠然としたイメージからでした。

 

まさか、

私の人生にこんなにも影響を及ぼす場所になるなんて、、

 

この時、まだ20代半ばの、

新婚ほやほやの私は

そんなこと、これっぽっちも思ってはいなかったのでした。

 

写真は当時のもの、若い、、、。

初めて足をふみいれたフィレンツェは

中世から時が止まったかのような街並みに、

重ねられてきた歴史と芸術が色濃く息づく場所でした。

 

想像をはるかにこえるスケールに

ただただ圧倒されていたような気がします。

 

この街に、

今の時代を生きている自分が

立っていることが不思議に感じるような感覚。

フィレンツェの街では買い物も楽しみの1つでした。

この時に買った革の手袋、革のジャケット、

旅の思い出とともに今でも愛用しています。

 

そして、

ガイドブックに印をつけていた革小物のお店。

 

確か一回目に探したときは見つけられなくて、

翌日再度探しにいった覚えがあります。

 

イタリアのお店って、

営業時間通りには空いてないし、

ましてこのお店は、

表のディスプレイにはごちゃごちゃとものが置かれていて、

外から見たら何の店かわからないのです。

 

(今となっては革工芸の古い道具たちや

師匠の愛してやまない自転車の部品であったり、

師匠の好きなものがぎゅっとなっている世界だと理解しています。)

 

そう、

これが師匠の工房との、

コインケースとの出逢いでした。

恐る恐る中に入ると、

古びた紙のような匂いと

つくりかけの作品、何かの道具、写真、本、、

雑多なものたちで埋め尽くされた空間の中に、

 

不思議な輝きを放つ革小物たちが並んでいました。

 

その奥で、

これまたものが山積みになった台に向かい

手を動かしている1人のイタリア人男性。

 

彼はわたしたちに気付くと、

片言の日本語で声をかけてくれました。

 

英語があまり得意ではなく

ましてやイタリア語なんてちんぷんかんぷんの私たちは、

異国の地での日本語がとても嬉しく感じたように覚えています。

 

私たちは彩り豊かな革小物を前に、

あれこれ色を悩み、

コインケース、カード―ケースをそれぞれ選び、

師匠が目の前で、

イニシャルとフィレンツェの紋章を

手作業で刻印してくれました。

 

そのときの、

新鮮な感動は今でも胸にやきついています。

 

異国の地での、

ちょっと変わったお店での

買い物体験。

 

最後に師匠と並んでいっしょに写真を撮って、

お店をあとにしました。

 

フィレンツェの何に

私はここまで心惹かれているのだろう。

 

街を歩くだけで美しい街並みにうっとりするし、

食べものはどれも美味しいし、

人も陽気で明るくて、こっちまで楽しくなっちゃう。

 

好きなところをあげたらきりがないけど、

安定していた仕事を辞めてまで、フィレンツェへ渡った理由。

 

若さゆえ、かもしれません。

留学当時は28歳でしたから、、、

 

 でも確かなのは、

あの日、

あの工房で、

目の前でものが生まれる瞬間を見たこと。

 

そのときの新鮮な感動が、

フィレンツェへ渡る決心をさせたのかもしれない、と

いろいろと振り返ってみて思ったのでした。