革のものづくりを始めた理由

出展していると、

みなさんから、なぜ革を?と

ものづくりのきっかけをよく尋ねていただきます。

 

あらためて辿ってみると、

長くなってしまったので

こちらに記しておこうかなぁと思います。

 

私の前職は、百貨店社員。

百貨店に就職したのは、

買い物が好きだったこと、

そして何より人が好きで、

接客をしたかったという単純な理由です。

 

最初に配属されたのが、

紳士革小物売場。

お財布やベルト、カバンを扱う売場でした。

 

そう、これが私の革との出会いです。

 

お客様にしっかりとご説明したい、

その一心で

商品や革についての知識を深めるべく、

メーカーの展示会や工場見学、

革をつくるタンナーさんなどにも足を運び、

現場で働く人の姿と、その思いを知りました。

 

そうして知れば知るほど、

革という素材にどんどんはまっていったのでした。

 

今から思えば、

ものづくりの現場でその営みを目にしたこと、

ものづくりを生業としている人の姿に、

憧れを抱いていたのかもしれません。

 

革が好き、

でも自分のいる売場に、

私が「この革は素材としていい!」と思えるものがありませんでした。

 

今の大きな市場経済、

その経済活動のサイクルの中では、

効率、採算が重要視されてしまいがちです。

(もちろんそれは悪い面ばかりではないのですが、、)

 

私の好きな革は手に体にしっくりとくる、

使っていくと風合いが増してくる革。

 

そういう革は、

個体差が激しく、つくる手間も時間もかかるため、

素材として大量生産には向かないのです。

 

自分の欲しいものがないから、自分でつくる。

そこから自分の好きな革をつかって

小物やバッグをつくるようになっていきました。

 

ただ、ものづくりが得意なわけでもなく、

デザインを学んでいるわけでもないので、

つくるものが中途半端。

つくる技術を学びたいと思うようになりました。

 

そして、

心の中にずっとあった、

フィレンツェのあの工房のことを思い出したのです。

 

そこで目にした職人の手の仕事、

ものが生まれる現場に漂う空気、

私の心の中にその風景が焼き付いていました。

(このフィレンツェの工房との出会いは、長くなってしまうのでまた別の機会に。)

あそこで学びたい、、!

 

主人は行くなら早い方がいいと

背中を押してくれました。

 

会社の上司は仕事にもつながることだからと

休職の提案をしてくださったけど、

(なんて心の広い会社、、、仕事は楽しかったし上司や同僚にも恵まれていました)

 

けじめをつけたくて、

5年勤めた会社を辞めて、

フィレンツェへと渡ったのでした。

 

革も好きだけれど、

それ以上に、

人がものをつくるという営みそのものに、

私は強く心惹かれるのかもしれない。

 

それを目の当たりにし、

そこに触れてしまったら、

もう心がとめられなくなる。

 

だから、

他の素材やそれを使ったものづくり、

作る人への興味がつきないのです。

 

時に、

こんなに聞いたら引かれるかな、、と思うほど

他の素材を扱う作り手の方に

技法などをあれこれ聞いて、

その話に聞き入ってしまいます。

 

なんだか少し脱線してきました。

いろんなことが

今につながっているのだなぁと思います。